
小雨の振る中、バスを降りた。
「布引の滝国立公園」と看板に書いてあり、広い広い駐車場があり、
向こうの方に滝が見え、左を見ると向こうの方に東屋があり、そのまだ向こうにトイレがあった。
テントを張るなという看板が書いてある。
その他には、何もない。
しまったと思った。
もっと色々、例えば植物とか遊歩道とかあるだろうと思っていたのに
なんと滝以外には何もない。
公園て書いてあるのに。いや確かに公園だけれども。
とにかく滝の傍まで行ってみることにする。
滝の周りは岩場になっており、この岩場から滝を見上げた私は落胆した。
滝までの距離が遠い上に、ここからでは滝の全貌が見えない。
後ろに下がると岩が邪魔になって見えず、近寄っても岩が邪魔になって見えない。
要するに、どうやっても岩が邪魔になって見えないのである。
どうにかもっと近づけないかと辺りを見渡すと、
滝に向かって右側は水が流れており、左側は山の斜面である。
この斜面は1m弱くらいの高さまで石垣っぽくなっていて、
その石垣の上に2箇所ほど踏み後があった。
そうかここを登っていけばいいのかと足をかけると
思いの外斜面が急であったので、
濡れてはいけないものを入れて手に持っていた防水巾着を首にぶら下げ、
傘・・・は雨が降っているのでさしたまま、再び斜面を登りはじめた。
濡れた落ち葉と泥で滑りそうになるのを踏ん張りながら、
なんとか滝のすぐ傍まで近づくことに成功。
国立公園と書いてあるのに、駐車場やトイレはとても立派なのに
どうして滝の周辺だけこうも危険なのか。
この滝を見るために私は2時間もバスに揺られて疲れ、
木の枝に掴まったため手はドロドロ、
挙句の果てに使用方法は絶対間違っているが首から巾着をぶら下げている。
私がこんな醜態を晒してもここは国立公園と言い張る気か。
何だか納得のいかない思いで写真を数枚撮って引き返した。
いつもの事だが急斜面は登りより下りの方が怖い。
相変わらず足元は緩く、滑り落ちそうになったのでとっさにその辺の木の枝を掴むと
緩い地盤に生えている木は根性がなく、枝だけでなく幹もろとも私に付いて来た。
ああ私はあんなに遭難の心配をしていた縄文杉登山からは無事に下山して来られたけれども
こんな高々2mくらいの斜面から転がり落ちてケガを、
運が悪けりゃ頭を打って死んでしまったりするんだなと頭の隅で考え、我に返った。
冗談じゃない。
「布引の滝国立公園で観光客 骨折」
とか
「頭を強打 それでも滝が見たかった」
みたいな、不名誉な見出しを思い描きながら、私は何とか下まで降りた。
この滝の周辺が未整備である理由は、ここから2時間後に判明する。

辛い辛い車道をやっとこさ降りて来て、
行きにも通った分かれ道にさしかかった。
下から登ってきて右方向が「竜神の滝」、左方向が「千尋の滝」である。
「竜神の滝」はガイドブックには載っていなかったので、
もし、しょぼい滝だったらどうしようと迷っていたのだが、
再び分かれ道まで降りて来て時計を見ると、次に乗るバスまで40分くらいある。
ただ、ここからどのくらい歩けば竜神の滝に着くのか皆目わからず、
もし途方もなく遠かったり山の上とかだったらどうしよう。。などと考えながら
分かれ道の道路脇に立ち止まってやっぱり迷っていた。
せっかくなのだし、10分歩いて水音が聞こえなかったら引き返そう。
と、いうわけで竜神の滝方向へと歩を進めることを決意する。

道端でこんなにも悩みぬいた挙句、
勇気を出して決意した割に
5分も歩くと轟音が聞こえてきた。
橋があり、その橋から
山手を見ると大きな滝がある。
橋を渡ると「竜神の滝」と
書いてあった。
こんなに立派な滝なのに、千尋の滝のついでに見られる好アクセスな場所にあるのに
ガイドブックに載せてもらってないからかこの滝は訪れる人が少ないらしい。
誰もやって来ないのをいいことに、人目を憚らず携帯電話を構えて写真を撮った。