続続・よいこの1日  -

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04

26

22:14
Sun
2009

No.0445

赤ザックのこと

登山口に着いたのは15時半前だった。
別に計算していたわけではなく、最初はもっと早く着くだろうから
あまり早い時間に着いて相乗り仲間や乗せてくれる車が見つかれば
赤ザックを待たずに下山しようと思っていたのである。
しかし思いの外トロッコ道は長く、途中で歩くのに飽きてしまいペースが落ちた。
それでもこのトロッコ道はレールの間に敷かれた板の上を歩くので歩きにくい道ではなかった。
しかし登山口間近になると普通の線路になり、何というかこれが曲者で
枕木の上を身軽に歩いていきたいのはやまやまなのであるが、
この枕木の間隔と自分の歩幅が合わない。
小股でちこちこと歩いてはイライラするを繰り返してようやく登山口へ着いた。

とりあえずバス停の時刻表を見ると、相変わらずストライキのビラが貼られていたので
そのビラをめくってバスの時間を確認するとバスの到着は1時間後。
じゃあタクシー・・・と思っても今から呼んだところでバスと同じくらいの時刻に来るだろう。
何より携帯電話の充電が切れている。
石の上に座って考え込んでいると、赤ザックがお待たせと言いながらやって来た。

赤ザックのお客さんは東京からやって来たという若い殿方で、
有難い事に私の同乗を快諾してくれたので、私はいそいそと後部座席に乗り込んだ。
屋久島ガイドは移住者が非常に多く、案の定赤ザックの出身は東北だった。
「babarさんはどちらから」と聞かれたのでbabar県であると答えると
昔、旅の途中でbabar県に立ち寄った時、村人に大変親切にしてもらった記憶があり
babar県に対してとても良い印象を持っていると彼は言った。

babar県を愛して止まない私とbabar県に良い印象を持つ赤ザックは
トロッコ道と白谷雲水峡への道が合流する"楠川分かれ"という場所で出会った。
彼に対する私の印象は、人の事をジロジロ見て失敬であるなというものだ。
そして私に対する彼の印象はと言えば、話しかけてはいけないような、
非常に近寄りがたい雰囲気を持っていたのだそうだ。
確かに、2年ほど前まではよく怖いとか近寄りがたいとか言われたものだが
ここ最近はめっきり言われなくなっていたので、
何か自分の身辺で異変がなかったかと考え込んでいると
「いや、実際に話してみると全然違うからびっくりしたのだけどね」と付け加えた。

ところで昨日山小屋にいた人(口クラッカーのことだろう)は知り合いなのかと赤ザックが聞いた。
全く知らない人だが、前日に白谷山荘で同室だったことを話すと、
自分達とは全く話さないのになぜあんなおっさんと仲良くしているのかと思ったのだと言った。
赤ザックと"あんなおっさん"は同年代くらいだと思うけどと心の中で思った。

ここで、私は赤ザックのお客様が殆ど喋っていないことに気づき、
乗せてもらっている身であまりベラベラ自分の事を喋り捲るのもよくないと思ったので、
おにいさんも今回、一人でいらっしてますけども方々へ旅行されてるのですかと話を振った。
東京出身の殿方が何か喋ろうと息を吸い込んだ瞬間、
「そうだねぇ」と口を開いたのは赤ザックだった。
私は"おにいさん"と言ったのだ、赤ザックはむしろ"おじさん"じゃないのかと心の中で思った。

道草(殿方のツアー内容の一部?)を食いながらも
1時間ほどで私の宿に到着、赤ザックは私の荷物をちゃんと車から降ろしてくれた。
沢登りして誰も知らない滝に連れて行ってあげるから次回は自分を雇ってくれと
しっかり営業活動をしながら東京の殿方を乗せて去って行く東北ナンバーの車を見送りながら、
ありがとう必ず次回は赤ザックを雇って滝へ連れて行ってもらいますよと手を振る。
しかし私は、彼がどこに所属する何というガイドなのか未だに知らない。
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04

22

21:31
Wed
2009

No.0444

トロッコ道模様

IMG_0370.jpg
トロッコ道は延々と続く平坦な道なので
山道よりも遥かに楽なはずなのだが
私はこのトロッコ道が一番辛かった。
行けども行けどもトロッコ道で
登山口付近では手すりのない
橋(?)を3つ4つと超えねばならず
なぜか水が降ってる所があるかと思えば
余所見をしていると時々
後ろからトロッコが走ってくる。

ゆるゆる歩いていたつもりがお年寄りの集団に追いついてしまい、
ガイドさんがイライラしながらすごい掛け声で集団を脇に寄せてくれたものの
その掛け声には「後ろからすごい勢いでやって来る危ねぇヤツ」みたいな
私に対する非難がこめられている気がした。
この集団に次の休憩で追いつかれないようなるべく遠くまで歩こうと思っていたが
道端で座っている時に追い抜かれ、再び歩き出すとまた追いついてしまったので
"三代杉"なる杉の木の前で長い休憩をもう一度取ることにした。

IMG_0374.jpg
 "三代杉"はその名の通り、
 倒れた杉の上に杉が育ち、
 その杉の上にまた杉が育っている。
 行きにも足を止めて読んだ
 解説板をもう2回くらい読み、
 ベンチに腰掛けてじっとしていた。
 さっきのお年寄り集団が
 大分先まで進んでくれるのを
 ここで待つことにしたのだ。

それにしてもひとたび人の往来が止むと、大変静かな場所である。
葉っぱの擦れる音と鳥の鳴き声以外は何も聞こえない。
しかし葉っぱの音や鳥の鳴き声というのは不思議なもので、
何もせずにひたすら座っているだけでも全く飽きずにいつまででもそこでいられる気がする。

IMG_0383.jpg
しばらく一人の世界に浸っていると
3人の殿方がトロッコ道を歩いてきた。
彼らは地図らしき紙を覗きながら
「えーとどこかこの辺で左に・・・」
と頭を掻いている。
どうもこの1本道で道を探しているようだ。

次の見物客がやって来たところで
私はそろそろ先に進もうかと
置いたザックに腕を回すと、
彼らは三代杉の傍の
ちょっと開けた方へと
進んでいったので
おやと思い、再び腰を下ろした。

どう考えても彼らは道じゃない方へ行っている。
そこで、私はしばらく黙って彼らの動向を見ていることにした。
私はたいがい方向音痴な人間であり、地図を持たせるとぐるぐる回してしまうタイプなので
そんな私が明らかに道じゃないと思っている方向へまさか殿方3人が
道だと思って進んでいるとは考え難いと思ったからである。
ここで声をかけて、「いや森をよく見たいから覗いてるだけです」とかだったら赤っ恥だ。
しかし人の踏み跡もロープもピンクリボンもないそっちは
明らかに一観光客が歩いて行く方角ではない。
確かに、自らの道を切り拓くことは人生の中で大切なことではあるが
それは別に屋久島の森でしなくてもいいことである。
何事も命あってのモノダネであり、こういう場合は甘んじて他人様の敷いたレールの上を
歩いていく方がいいのではないか少年達。

大分奥の方まで行ったところで彼らのうちの一人がおかしいと思ったらしく、
「おい本当にこっちなのか」(みたいな感じで)と足を止めた。
3人はしばらく相談していたが引き返してきて「すいませーん」と私に声をかけた。
「白谷雲水峡に行く道ってこの辺ですか」と。
私は、ここから少し先に楠川分かれという看板があるのでそこを左であると説明した。
彼らはありがとうございましたとお礼を言い、危なかったと騒ぎながら行ってしまった。

他人事ながら彼らの将来が少しだけ心配になった。
04

21

21:46
Tue
2009

No.0443

口クラッカーのこと

山道とトロッコ道の境目には、私が泊まった高塚小屋よりも立派なトイレがある。
何となく雲行きが怪しく、雨が降りそうな気配はするが
時間調整のためここでも長めに休憩を取ることにする。
と、いうのも朝7時過ぎに小屋を出発したので普通に歩けば
昼前に登山口に着くはずなのだが、それでは早すぎるからだ。

当初の予定では、さっさと下山して町の観光をしようと思っていた。
バスは夕方しかないので、事前にタクシーを呼んで。
しかし携帯電話の繋がるスポットを探す以前に携帯電話の充電がない。
登山口から町までの足がない私はそこで、口クラッカーにそれとなく予定を聞いてみた。
口クラッカーはバスの本数が多い白谷雲水峡へ戻るつもりだと答えた。
私は一緒に荒川登山口へ下りてタクシーを相乗りしてもらいたかったので、
口クラッカーが足を痛めているのを口実に
「白谷雲水峡は峠までの道程が険しいから荷物を背負って歩くの大変でしょう」
と、進言した。口クラッカーはヘーキだと答えたので私は舌打ちした。

そんなわけで、登山口で誰か同じ境遇の人を見つけるしかないなと思っていたところへ
幸運にも車に乗せてくれるという赤ザックの申し出があったのである。
が、ここで最初に仕掛けたワナにようやく食いついた魚が現れ、私は困惑する。
なんと口クラッカーが「しかし荒川に下りて相乗りタクシー仲間を見つける手もあるな・・・」
と、寝袋の中でごぞごぞ動きながら呟き出したのだ。
そんな今さらと思いながら私は自分が足を確保できたことを言い出せず、
「・・・ですよね。でもまあ明日のことは明日考えましょう」と言葉を濁して寝返りを打った。

IMG_0346.jpg



 彼は今ごろ白谷雲水峡を歩いているかな。
 と、長い長いトロッコ道を歩きながら
 私は考えていた。
 そして、タクシーを
 相乗りしてあげなかったことを少し、
 反省してもいた。


さて、この口クラッカーのその後であるが
彼はお昼の12時過ぎに白谷雲水峡ではなく荒川登山口に到着し、
タクシーの同乗者を見つけて3人で下山、その足で静岡へと帰っていったたようだ。
なぜ私がそれを知っているのかというと、
そのタクシーの同乗者が偶然にも同じ宿に泊まっていたからである。

彼は言った。
「あれ、あなたもしかして赤いジャージのおじさんに会わなかったかい。
実はボクも今日、縄文杉に行ってて荒川登山口でバスを待ってると
おじさんにタクシーを相乗りしないかと持ちかけられたんだよね。
2人だと高いから嫌だと最初断ったら、高塚小屋で一緒だった女性が一人、
もうすぐ下りてくるはずだからちょっと待ってと必死に説得されてしまってねぇ。
登山口の方を見ながらおじさん、その女性をずっと待ってたんだよね。
結局、別の人が見つかったから3人で乗って帰ってきたんだけど。」

IMG_0212.jpg

赤いジャージだったかどうかは
わからないがその人は知っている、
もちろん「高塚小屋で一緒だった女性」は
私のことであると答え、
その時間に私が現れなかった
理由を話した。

そして自分から話を
持ちかけたにも関わらず、
私の相乗りを頼りに
荒川登山口への下山を決めたであろう
口クラッカーを裏切ったことに対し、
深く深く反省したのである。
04

17

21:46
Fri
2009

No.0442

十人十色

ウィルソン株が気に入ってしまい、えらく長時間に渡ってベンチに腰掛けていた。
日帰り客はどんどんやって来ては写真を撮り、
ご飯を食べたりおやつを食べては縄文杉へと進んで行く。
途切れることなく人が来ては途切れることなく登っていくのを私は飽きることなく眺めていた。
デートに持っていくようなバッグを提げている貴婦人もいれば
延々徒歩なのにメッセンジャーバッグを引っ掛けている人、手ぶらで来ているツワモノもいる。
登山ウェアでビシッと決めている人もいるしそれじゃ足曲がらないでしょうというくらい
ピッチピチのジーパンを履いている人や動きやすそうなジャージのおばさんもいる。
普通のスニーカーの人もいるし、なんとバレエシューズみたいなぺたんこ靴や
それはローファーではないのかというような靴を履いている人もいた。

昨晩の小屋の様子を尋ねてきたガイドさんに
観察道と書いてある看板はくるっと回ってここに戻って来られるのかと尋ねたところ、
「そうだよ」と軽い返事が返ってきた。
時間がまだ9時前であり、どう考えてもこのまま下りていけば
登山口に着くのは昼前後になりそうだと思った私は
時間つぶしに自然観察道とやらを歩いてみることにした。
ザックはその辺に放置して手ぶらで向かう。
確か下りてくる途中、少し上の方で同じ看板を見かけたので
道を示すピンクのリボンを辿っていけばあそこに出るのだろうなと思いながら
自然を観察できる小道だと軽い気持ちで歩いていたところ・・・

道はどんどん険しくなっていき、挙句の果てに次はどう行けばいいのかわからなくなった。
結構歩いて奥まで来たのに引き返そうかと思いながら右往左往して
ピンクのリボンを探していたら、上の方からずざざざという音とともに話し声が聞こえた。
見上げると、斜面から昨晩同じ小屋に泊まっていたファミリー+ガイドがいる。
なるほど上に上がるのかと木の枝を掴んでこんちはと言った。
ファミリーはこんちはと返してきたが若いガイドさんは相変わらず私には無愛想である。
どうも彼らの下山ルートは自然観察道だったらしい。
ガイドさんがついていると色んな道を回れていいなと思った。
斜面を上がりきってしばらく進むと今度は赤ザックに遭遇。
あれーと言われたのでかくかくしかじかと事情を話し、
こんなに遠いとは思わなかったが観察道はまだ続くのかと尋ねた。
「はぁナルホド。下りてったはずなのにこんな所にいるからびっくりしたよ。
ここからだとこのまま上がって行った方がメインの道は近いからその方がいいね。
まあ、余裕もあるみたいだし大丈夫そうね」と言いながら赤ザックはぽかんと口を開けている。
「手ぶらなのでこうやって走り回っても平気だけどザック持ってたらきっとひっくり返ってました」
と苦笑いをしていると、赤ザックのお客さんである若い殿方は
「また登ってるのスゴイネー」と呟いた。
いや、登るつもりは毛頭なく私はただ自然を観察できる道だと思っていただけだ。

やっと山道を出て遊歩道に出ると、思ったよりもずいぶんと上まで登っていた。
さっき下りていった遊歩道を再び降りて行くと、
1回目は時間が早かったのですれ違う人は殆どいなかったのに
今度は日帰り登山客がどんどん登ってくるもんでなかなか先に進めないことが発生、
しかも連中は集団で登ってくるのでそのたびに立ち往生である。
登り優先なので脇によけて待っていると、おっさんが
「ハー待たれると辛いねぇ申し訳ない気がして早く行かなきゃって焦るし。」
と呟いた。こちら急かしているつもりはないので若干傷ついた。
すると同行者のおっさんが
「いや、登り優先だからこっちは何も気にせず待たせておけばよいのだ。」
と慰め、どっちにしても傷ついた。黙って進めおっさんよ。
あまりに混んでいるので、人が切れると次の渋滞まではダッシュで走ることにする。

次の集団にはじーさんガイドがついており、そのじーさんガイドは目を丸くして
「えぇぇえぇっっ!もう行ってきたのかい。」と、なぜかわからないが大声を上げた。
いや2回目ですと答えると、「なんだってお宅一体何時から登ってんの」と。
「一昨日です」と答えると彼はますますわけがわからなくなった様子だった。
そう言えば手ぶらだったので、多分彼は丸腰の私を見て日帰り登山だと思ったのだろう。
とにかく集団をやり過ごしてそのまま再び駆け出した。

次に出会った集団は若い殿方ガイドと学生らしき男女の集団。
若いガイドは大変親切な殿方で、集団に向かって叫んだ。
「下りですがー。一人なので皆脇によけてー
彼女がおしゃれに下りられるよう通してあげてくださいねー」と。
私は彼のお陰でおしゃれに下りていった。多分。

この道で一番勾配のきつい場所ですれ違った学生達が上を見上げながら
「ここを登るのカー。こりゃ小学生なんかは絶対無理だ!」
と絶句しているのを見て、寝袋を背負って息も切らさず淡々と登り、
山小屋でいびきをかいていたファミリーの末っ子を想った。
彼はきっと小学2~3年生くらいである。

ようやく渋滞を抜け、出発地点のウィルソン株に到着。
ここで5分程の休憩を取る。
まだまだ先は長い。
04

15

22:05
Wed
2009

No.0441

ケータイ

屋久島に到着したその足で白谷雲水峡へ向かったのだが、
登山口へ行く途中から既に携帯電話は使用不能になっていたため
その時点で私は携帯電話の電源を切っておいた。

山の中ではもちろん使えないのだが、所々では繋がるスポットがあるらしい。
そのスポットで帰りのタクシーを呼ぶためとか遭難(?)した時のために
携帯電話の電源は切っておかなければならないのである。

縄文杉の周辺では携帯電話の繋がるスポットがあるらしい。
だから明日の朝は縄文杉あたりからタクシーに電話をかけて迎えに来てもらおう。
そう思いながら三角座りをして縄文杉を眺めていた。

明日は縄文杉の前で電話を・・・電話・・・・ケータイカメラ。。。
あ。と思った。
山から下りたら縄文杉の写真をいち早く姉pinguに送りたい。
しかも寒さのおかげでカメラの電池があっという間に消耗してしまい
カメラはいつ使えなくなるかわからないような状況である。
わくわくとケータイを取り出し、電源を入れた私は
1枚だけ、
写真を撮った。
そう。1枚だけ。

そして、相変わらず圏外と表示されている画面を見ながら
デッキの上をちょっとだけ歩き回った。
繋がる場所がないか探していたのである。
が、ゆっくり10歩くらい歩いたところで諦めた。
後で誰か通りすがりの人にでも聞けばいいかなと思ったからだ。
携帯電話の電源を切り、バッグの中にしまった。

口クラッカーに水汲みを断られた私は、一人で小屋から縄文杉の下にある水場へ行く。
帰りに鹿と会ったのでやあと声をかけると、
鹿はぽくぽくとどこかへ行ってしまった。
まだ明るいし小屋には赤ザックがいて居心地悪いし帰ったところでやることはない。
眠るにしてもこんなに早くから寝たら間違いなく皆が寝静まった頃に
一人で目が覚めて怖い思いをするだろう。
口クラッカーとおしゃべりをするにも疲れてしまったことだし
展望小屋に登ってしばらく一人で座っていようと思い立った。

通りすがりの人に、私が展望小屋に座っていることがバレないよう
道側に座るのを避けて山の斜面側に腰をおろした。
展望小屋とは言え、山道の途中にぽつんと立っている背の高いただの小屋なので
特に視界がいいわけでもなく、私はとにかく座っていた。
寒いし1日中歩いてひどく疲れていたため、
風で木がワイワイ言っているのを聞いているうちに眠くなってきたので目を瞑る。
ここで居眠りしてはっと起きたら夜でしたとかだったらどうしよう。
などと考えて目を開け、それでもやっぱり座っていた。

と、お腹の上に置いていたウエストポーチがびびびびと鳴った。
慌ててバッグを開けると、私の携帯電話がメールを大量に受信しているではないか。
驚いて携帯電話を取り上げると、どうも電波が入らなくなったらしく
しばらく力んだのち、受信しきれなかったメールを残して
「ダメでした」みたいなメッセージを表示したかと思うと、
携帯の電池は一気になくなってしまった。
電源は確かに切ったはずなのに気のせいだったらしい。
呆然として電源を切り、私は展望小屋を後にした。

結局、赤ザックの好意により私は帰りの足を気にしなくてもいい身分となり、
登って来た道を考えると降りる途中にケガでもしない限りは遭難することも少なかろうと
見事に不安の薄らいだ私はその日の晩、ぐっすりと眠ることができたのだが
その翌日、ウィルソン株付近でうだうだと座り込み、続々と登ってくる日帰り登山客を眺めていると
若い貴婦人の集団が黄色い声をあげながらガイドさんにシャッターを押してもらっていた。
ケータイ付きカメラだかカメラ付きケータイだか知らないが
電源を入れたままのアレを片手に走り回る彼女達を横目で見ながら、
いい気なものねと私はSOYJOYの袋をぺりりと剥いた。
04

08

22:43
Wed
2009

No.0440

高塚小屋模様

IMG_0279.jpg
 2泊目の小屋の中では
 昨晩の同室者である
 口クラッカーのおじさんが
 座って本を読んでいた。
 どうもどうもと挨拶を交わし、
 今日もおじさんの上で寝ようと
 梯子を上って様子を見たが
 重いバックパックを上げるのが
 急に億劫になったので
 右端にいるおじさんに対して
 私は左端を陣取ることにした。

 あんなに苦労して畳んだ寝袋を、
 勇気を出して再び引っ張り出す。

と、昨晩はまったく口を聞いてくれなかった(と、いうか話しかけられなかった)口クラッカーが
今日は若干慣れたのか、ぽつぽつと世間話をはじめた。
口クラッカーは持ってきたウイスキーを私に勧めながら
自分は静岡から18きっぷで来ており、夏の間は山でキャンプ場の管理、
冬はアルバイトなどをして生計を立てているのだと語った。
そして私がトイレに立っている隙に3cm四方くらいのちっさいちっさいメモ用紙に
施設の住所と自分の名前を書いていつか遊びにおいでとくれた。

おじさんのウイスキーを飲みながら、今夜はさぶいらしいとかここには水場がないとか
他愛もない話をしているとヘリコプターの音が聞こえてきた。
どうもこの辺の頭上をぐるぐると回っているらしくどうも騒がしい。
そこで口クラッカーと一緒に外へ様子を見に出てみることにした。
ヘリコプターはやはり頭上をぐるぐる回っていた。
「何か探しているみたいですね」としばらく2人で空を見上げていたが
まもなくどこかへ去って行ったので私たちは再びいそいそと小屋へ入った。

トロッコ道で見かけたファミリー+若いガイドが、
続いて赤ザック+若い男性の2人組が立て続けに到着すると
一気に人口密度が上がり小屋の中の温度も上がり始める。
私は赤ザックのお陰で居心地が悪くなったので、
小屋を出たり入ったりして不審な行動をとっていると
赤ザックが「水は十分持ってますか」と声をかけてきた。
「イエ、ここに水場がないと聞いたので明るいうちに汲みに行こうと思ってます」
と、引きつりながら答えると、この下にちょろちょろ流れている水は
あまりいい水ではないので縄文杉の下くらいまでお行きなさいと教えてくれた。
どうも赤ザックは登山客ではなくガイドだったらしい。
口クラッカーに水のことを告げると、彼は今晩の分くらいなら間に合いそうだから行かない
とニベもなく断られたため、散歩がてら一人で水を汲みに行った。

私は水をまったく持っていなかった。
小屋へ来る途中、縄文杉の下で確かに注ぎ足してきたのになぜ水がなかったのかというと、
口クラッカーとウイスキーを飲んでいる時に彼らがやって来て
場所を空けるために慌てて広がった荷物をかき集めていたところ、
蓋の空いたペットボトルを過って倒してしまったからである。
しまったと思い、とっさにその辺に置いてあったトイレットペーパーで拭いたところ、
水はなくなり、ゴミが増えた。

ともかく、水を汲んで戻ってくると口クラッカーは相変わらず口を鳴らしながら、
その他の一行は鹿と戦いながらご飯を作っていた。
部屋の温度はますます上がり、快適である。
2人ぼっちの時はあまりに寒くてドアの隙間風さえ危惧していた私だが、
この様子だとどうやら心配なさそうだ。

夕暮れが迫り、薄暗くなってきたのでもう寝る準備をしようとトイレに行こうと小屋から出ると
小屋の前で赤ザックが若いガイドとお酒を飲んでいた。
今日は天気がいいからもう少ししたら素晴らしい夕焼けが見えると赤ザックに呼び止められる。
若いガイドは、「雇ってもらってない人にまでガイドする事はないぞ」とでも言いたげに
あっちの方向を見てふんと鼻を鳴らした。

夕焼けはとても見たいが眠いので待ちきれないかもしれないし、
若いガイドの醸す雰囲気から彼ら一行のツアー内容に混じって外で待つのも気が引けるので
小屋の中で口クラッカーを相手に夕焼けの頃を待つことにした。
ら、いつの間にかとっぷりと日が暮れてしまい、私はまたもや絶景を見逃す。
外に出て、赤ザックに夕焼けはどうでしたかと尋ねると
思ったほどではなく残念だったが一応写真は撮ったと言って見せてくれたので
幻想的でキレイな色ですねと感想めいたことを述べて私はトイレに向かった。

トイレから小屋までの道で佇んでそろそろ寝ようと伸びをしていると
ヘッドライトが歩いてきて私に話しかけた。
口クラッカーが寝る前のトイレに来たのだろうと思い応答していたが、
「キミは明日、どこへ行くのか」という問いにはたと動きが止まる。
明日のルートについてはさっき小屋で散々話したのになと思った次の瞬間、
ヘッドライト=赤ザックであったことを悟った。
「今日は昼間からずっと見ていたけど、とてもいい感じに歩いていたので
もし荒川登山口に下りるなら、我々と時間が合えば町まで乗せてってあげるよ。」

もちろん、荒川登山口に下りるつもりだった。
足はないのでその辺でタクシーを乗り合わせて町へ行くか
夕方にやって来るバスの時間に合わせて山を下りようと思っていたので
心は非常に躍ったが、ここは平静を装って
「個人で来てるし初めての場所なので下りる時間は検討もつかないけど
もし、同じくらいの時間帯に下りて乗り合いタクシーが見つからなかったらお願いします」
と、答えた。
赤ザックは、自分が持っているお客様は一人なので問題ない、
乗せていいかどうかはお客様に聞かないとわからないが嫌だという事はあり得ないので
15時半~16時に登山口に下りてくれれば一緒に帰りましょうと言ってくれた。

ちょっとしたハプニングにより、自力でタクシーを呼ぶのは難しいと思っていた私は
何が何でも15時半前後に登山口に着くよう明日もがんばろうと決意し、
寝袋の口をぎゅっと閉めたのである。

IMG_0305.jpg
04

06

22:22
Mon
2009

No.0439

縄文杉迄

IMG_0329.jpg

"もののけ姫の森"は見逃したが、もう一つの目的は絶対に忘れてはいけない。
それは、ウィルソン株の中に湧いている水を飲むことと
ウィルソン株の中から上を見上げるとハート型に見える場所があるらしいので、
それを探して写真に収めるということである。
ここはとても人気のある場所らしく、人がやってきては写真を撮り、
休憩してご飯を食べてガイドさんの説明を聞いては進んでいくという一連の作業が
途切れることなく繰り返されている。
往路は昼過ぎに、復路は朝9時くらいにここを訪れ、
どちらも結構な時間を過ごしたのだがここだけはいつまでも大変な賑わいを見せていた。

IMG_0246.jpg ベンチに座っていると、
 ガイドさんの説明が聞こえてきた。
 念のため、言っておくが
 聞いているわけじゃなく、
 聞こえてくるのである。
 とにかく何気ない顔で
 左耳だけ大きくなった私は

耳の重さに耐えかねて徐々に重心を左に傾けながら切り株の話を一通りふんふんと聞いた。

後からやって来たグループを5組くらい見送ってからやっと私は歩き始めた。
ゆっくりしているのはバテているわけではなく、時間を稼いでいるのだ。
今日はこの先の高塚小屋に泊まるため、あまり急いで行っても
小屋で退屈な思いをするだけだからである。
追い越していったグループのうちの1組についていたガイドのおっさんが
今日はあまり人がおらず、今のところは2人くらいしかいなかったので
貸しきり状態でゆっくり眠れると教えてくれた。
ただ、昨晩泊まったガイドさんの話を聞くと、夜は氷点下だったので
非常に寒かった上に女の子の髪の毛がバッサバサだったとのこと。
バッサバサと寒さの因果関係はよくわからなかった。

IMG_0327.jpg
 縄文杉までの道は、
 "大株歩道"と名のつくとおり、
 私を10人束ねたくらいの
 でっかい切り株がもりもりと
 地面から生えていた。
 ウィルソン株から縄文杉までの
 一部の道は一気に高度を上げる
 大変険しい道なのである。
 荷物は重いし足が短くて届かないし
 何となく悲しくなっていると、
 縄文杉から降りてきた一行の
 ガイドさんがみかんをくれた。
 "たんかん"という屋久島の特産物らしい。

食べ物や寝る場所に頓着しない私は一人で旅行をしていると、
どうも宿代をケチったりご飯をその辺のコンビニで済ませたりしがちであり、
買っても食べきれない果物ははなから食することを諦めていた。
ので、思わぬ幸運にとても気を良くした私は
このたんかんは次に休憩できそうなところで食べようとかばんにしまって
ガイドのおっさんの後ろ頭にありがとうーとお礼を言い、再び歩き出した。

「次に休憩できそうなところ」は、沢に沿った岩場で
何組かのグループが腰掛けて休んでいた。
ここで一休みしようと速度を緩めて座る場所を探していたところ、
バチっと目が合った一人の殿方は紛れもなく赤ザックだった。
何となく居心地が悪い気がして、ふいとその岩場を通り過ぎてしまう。

その後、どうにも休憩できそうな場所は見当たらず、
階段を上ってウッドデッキのある場所に着いた。
こんな山の中に立派なものを作っているなと思いながら階段を上りきると、
目の前にあったのは縄文杉だった。

IMG_0285.jpg
拍子抜けな感じがした。
でっかいなぁとは思ったが
近寄れないためか、
あまり大きさや太さの実感がない。
でも、何mも離れているのに
カメラに収まり切らないので
多分相当大きいのだろう。

「縄文杉は残念である。」という話を旅行前にしばしば聞いたが、
私はミーハーなので縄文杉は絶対はずせないとこの旅程にした。
で、実際に来てみてやっぱり一度くらいは行ってみてもいい所だと思った。

縄文杉それ自体は拍子抜けでも、
縄文杉登山は、
縄文杉を見るよりも
縄文杉までの道程の方がおもしろい。
04

04

23:39
Sat
2009

No.0438

往来

IMG_0175.jpg

「明日の朝、天気が良かったら太鼓岩に登るといいよ。曇ってたら登らないでいいからね」
と教えてくれたのはホイッスルをくれたタクシーだった。
天気は悪くなかったし、たとえ曇っていたとしてもせっかくなので登ったはずである。

IMG_0170.jpg実は私、高い所が苦手である。
写真1枚撮るのにも命がけだ。
座ったままずりずりとお尻をずらして
崖っぷちに近寄り、シャッターを押すやいなや
這うようにわたわたと慌てて戻った。

そこまで怖い思いをして高い所に登ったり
わざわざ写真撮ったりしなくてもいいように思えるが、
せっかく遠路はるばるやって来たのに
怖いだなんて自分勝手な言い分で
見所を見逃すのは惜しいとも思うのである。
怖いと見たいのジレンマに陥りつつ、
たった150cm少々でもより低い位置を確保せんとして
結局いつも腰を抜かしながら地面にしがみつき、
低い体勢で以って高所に臨むのである。

冷や汗をかいてどきどきしながら岩から降りると
小屋でゆっくりご飯を食べていたカップルが登ってきたところだった。

太鼓岩の登り口が辻峠という場所で、そこからは下りになる。
足が短いと岩場は結構キツイのである。
飛び降りると大きな衝撃が足に来るので、コンドロイチン持参で歩いている私は
できるだけ足に刺激を与えないようそろそろと降りたい。
ので、あまりに大きな岩はよいしょと座って下りて行く。

IMG_0159.jpg でっかいザックを背負ってがんばる私に
 こんちゎと声をかける者があった。
 ヤンキー風の少年が一人、
 手ぶらで登ってきてすれ違った。
 朝の8時にこんな所で手ぶらだなんて
 これだけ早起きさんならきっと将来は
 パン屋になれるなと感心していると
 岩場を跳ねるように走って
 少年はあっという間にいってしまった。

やっとトロッコ道に出たので、とりあえずザックを降ろして休憩することにした。
道の脇に座っていると若い男性ガイドを先頭に小学生くらいの男の子、
中学生ぐらいの男の子、お母様らしき中年の女性がこんにちはと言って通り過ぎた。
4人ともすごい荷物を背負っているので今夜の同室者かもしれない。

まだくたびれていたのでザックにもたれて相変わらず座っていると
大きな赤いザックを背負った初老?の殿方が両手にステッキを持ってずんずん歩いてきた。
その後ろを若い男性がそろそろとついて歩いている。
親と子か、ガイドと客かどっちだろうかと目で追っていたが
彼らは特に何も言わずさっさと歩き去った。
その後、彼らとは抜きつ抜かれつしながらほぼ同じペースでトロッコ道を歩き続け、
抜いたり抜かれたりする度に赤ザックの視線が背中に突き刺さった。
なぜ彼が私を目の敵にするのか皆目わからず、気にしないフリをして歩き続けたのだが、
この刺すような視線は別に敵意の現れではなかったことを後になって知る。
しかしこの時の私は、感じの悪い二人(というか赤ザック)の視線を
どうにか振り切ろうとそればかり考えており、
最後の水場で休憩している彼らを横目で見ながら追い抜くと
彼らとの距離を離そうとそのまま一気に山小屋まで歩いたのである。


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04

02

21:17
Thu
2009

No.0437

失態

今回の旅では寒いと思って持って行った冬用のあったか寝袋は失敗だった。
寝ている間は暖かく快適だったのだが、いざ畳むとなると大変で
寒さで手がかじかんで上手く丸められないほどにもわもわだったのである。

寝袋を上手く丸められないのは非常に致命的ではあるが
これよりもっと深刻なのは、「もののけ姫の森」を見逃したことだろう。
1泊でいいはずの登山をどうして白谷雲水峡から入って2泊にしたのかというと、
時間と交通費を節約しつつ縄文杉ともののけ姫の森を絶対絶対見たいと思っていたからである。

森を見逃したことは白谷雲水峡を出てトロッコ道に入ってから気がついた。
時間はたっぷりあるし戻ってもいいかなとかすかに思いはしたが、
地図によると森は峠の向こうなので、せっかく下りて来た
岩のゴロゴロした険しい道を逆に登っていくのはさすがに気が引けたのでやめたのである。
無理にそのピンポイントに拘らなくとも、苔の森はとりあえず見たことだし。
この話を下山した晩に泊まった宿で他の宿泊客に話すと、
信じられない、キミはジブリの敵であるとジブリファンに非難され、
信じられない、看板がなくとも見たら俺でもそれとわかるぞとカメラ小僧に嘲笑された。

彼らの説明を聞いてよくよく考えてみたところ、1箇所思い当たる場所がある。
ふさふさの苔を素晴らしいなぁと眺めながら歩いていると、
とっても神秘的な空間なのに黄色と黒のロープが張ってあって
うーん写真を撮るには少し景観を損ねているなと思う場所があった。
きっと、観光客が道を間違えて入っていかないように順路を示すためのものだろう。
と、思いながら通り過ぎたあの場所こそが実はもののけ姫の森であり、
ロープは順路を明確にするためのものではなく、
単に人が足を踏み入れないようにするためのものだったのだ。

そう、確かに私はもののけ姫の森を見た。
その証拠に、その周辺で写した写真の一枚に
黄色と黒のロープが端っこにちょっとだけ写っているのだから。
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