No.0393
私の居場所
実家暮らしシングルライフの私はもちろんベッドもシングルだ。ノミほどの背丈しかない私にはこれで特に不満はない。
幼い頃に時々、姉pinguと一緒に一つのベッドで寝ることがあった。
pinguに比べると私は非常に寝象・・・寝相がいい方なので
そんな時はpinguが壁側で眠り、床側を引き受けた私は
ちょくちょくpinguに蹴り飛ばされてベッドから落とされたものである。
蹴り落とされるのを恐れてベッドのすれすれの位置に横たわってみても
彼女の足は私がベッドから落ちるまで追いかけてくるので大して効果はなかった。
大きくなって(pinguが嫁に行く前までだから2年前か)からも
この位置関係は変わらなかった。
一つ違いがあるとすれば、大きくなったpinguは
私よりもノミサイズの癖にダブルベッドを購入していたため
蹴られることはあっても落とされることがなくなった事ぐらいである。
で、ここにpinguの旦那であるおっさんが加わった時は
壁際からおっさん、pingu、私と川の字になるので
私はこの漢字を意識してちょっと曲がってみたりもするのだが
pinguが眠ったら最後、穏やかだった川は氾濫した水の如く荒れ狂うこととなる。
彼女はおっさん側にも私側にも縦横無尽に転がり続けた。
ダブルベッドで悠々とひっくり返りひっくり返り眠るpinguとは裏腹に
私は今でもシングルベッドでちまりと眠る。
かのんが我が家にやってきた当初はこのシングルベッドで一緒に眠った。
かのんは私の腕枕でもちろん壁際でイビキをかいていた事を思い出す。
大人になった今は1階にある自分専用のベッドで寝たい時に寝て、
暑くなれば床の上に寝そべる生活を送っている。
また、とある殿方に買ってもらった身長1mほどのふもふもさんカエルが
ベッドの半分を陣取っていた時期もあった。
そのふもふもさんにも私は嬉々として壁側を譲り、
夏の暑い夜も冬の寒い夜も残りの半分のスペースで幾夜を過ごしたものである。
1年以上もの間、私と一緒に眠ったこのふもふもさんは
去年、会社の忘年会にて2次会の資金を集めるチャリティオークションに出品されて
見事に落札されたため、今は人手に渡っている。
ふもふもさんがいなくなった日の夜、ベッドに寝転がった私は
何て広いベッドだろうと大変驚いたのだった。
pinguは嫁に行き、かのんは自分のベッドを持って自立し、
ふもふもさんは会社の2次会の飲み代となり、
現在では眠る私の隣には誰もいなくなった。
蹴られる心配も、かのんに腕を貸すことも、
シングルベッドの半分のスペースで直線になって眠ることもなく、
心置きなく一人でこのシングルベッドを使える身である。
が、大の字になって眠ることのできるスペースを得たにも関わらず、
気づくと私はいつも床側すれすれの場所で眠っている。
意識していなければベッドに横たわる時点で既にベッドの端、
がんばって真ん中に寝転がってみても
朝起きたらやっぱり床側すれすれのいつもの場所にいるのだ。
四角い長方形の中のこの一角が私の居場所なのである。